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風流志道軒伝(ふうりゅうしどうけんでん)

原文(巻之四)

風流志道軒伝 巻之四 06

▼開

莫斯哥米亜(むすこうびや)、 琶牛(ぺぐう)、 亜刺敢(あらかん)、 亜尓默尼亜(あるめにや)、 天竺(てんぢく)、 阿蘭陀(おらんだ)を始[め]として其外の国々には、家業(かぎやう)をしらぬうてんつ国、髪は本田に銀ぎせる、短羽織に日和(ひより)下駄、じやうるり、三絃(さみせん)、座敷芸、お花といへる地色に打込[み]、只遊ぶ事を第一とす。しかるに此国折[り]/\は大水出て、親の代より譲請(ゆづりうけ)し家業株(かぎやうかぶ)、町屋敷、諸道具、衣類なんどを押[し]流され、火の降(ふる)こと度々なり。又其隣国にきやん島といへるあり。神儒仏(しんじゆぶつ)の教(をしへ)もなく、からだはしぼり染のごとく、はりこみといふ網(あみ)にてあくたひと云[ふ]魚を取[つ]て肴にし、大酒を呑[ん]できをひ歩行(あるく)を業とす。

又おそろしき国あり。其名を愚医(ぐい)国といひ、又藪医(やぶい)国ともいふ。此国の人皆頭を丸め、折[り]に惣髪(そうはつ)なるもあり。学問を表にかざり人の病を直す事を業とすれども、近年甚[だ]下こんになり、書物を見れば目の先くらみ、尻の下より火焔(くわゑん)もえ出[で]、暫時(ざんじ)も学問する事ならず。只世間巧者にとばかり心懸[け]、軽薄(けいはく)を常とし、てれんついしやうの妙術(めうじゆつ)をきはめ、羽織は小袖より長く竹輿(かご)のすだれはいき杖よりもふとし。牽頭(たいこ)、媒(なこうど)、屋敷の売買、天窓(あたま)をふり立[て]かけまはり、見へ第一の薬箱も銀かなぐはかゞやけども、中の薬は吟味