風流志道軒伝 巻之一
爰に江戸浅草の地内に志道軒といへるえせものあり。軍談を以て人を集、木にて作[り]たる松茸の形したる、をかしきものを以て節を撃て、諸人の臍を宿がへさせる。猥雑滑稽、耳を抓で尻のごふ程。取[つ]ても付[か]ぬ歯なしの口をくひしばり、そこらだらけが皺だらけなる顔打[ち]ふり、或は白眼にして、他の世上の人を味噌八百のめつぽう矢八、九十に近き痩親父にて、女形の身ぶり聲色まで其趣[き]を写[す]こと誠に妙を得たりと言[ふ]べし。其説と
原文(巻之一)
爰に江戸浅草の地内に志道軒といへるえせものあり。軍談を以て人を集、木にて作[り]たる松茸の形したる、をかしきものを以て節を撃て、諸人の臍を宿がへさせる。猥雑滑稽、耳を抓で尻のごふ程。取[つ]ても付[か]ぬ歯なしの口をくひしばり、そこらだらけが皺だらけなる顔打[ち]ふり、或は白眼にして、他の世上の人を味噌八百のめつぽう矢八、九十に近き痩親父にて、女形の身ぶり聲色まで其趣[き]を写[す]こと誠に妙を得たりと言[ふ]べし。其説と