と地蔵の袖にすがりて獄卒の鉄の棒をうらむとかや。将棋は軍のかけ引きなりといへども、韓信、孔明将棋をさしたる噂も聞[こ]へず。今試に将棋の上手に採配とらせて軍させば、敵の龍馬に踏殺、桂馬の高飛、歩兵の餌食となるべし。香を聞[く]ものは、鼻を以て天下を治[むる]がごとき顔をしかめ、沈外息脈の極秘を極め、聞香悉能知と高ぶるとも、たかが無用の翫、六国なんどと文盲第一の名目を立[つ]ること片腹痛ことなり。楊弓は百射て五百中たりとも鼠を射る足[し]にもならず。鞠が上手なりとて、腹の減
と金出して色よき装束着るより外に能なし。尺八の名人が女郎の屁に蒔絵置[き]たるがごときやさしき音を吹出しても、敵討に出る用意より外何の役にも立[た]ざれば、歯のぬけるだけの損なり。皷のヤツハア、太皷のテレツクスツテン/\、とんと上手に成[り]おふせても耳へ入[つ]てぬける間の楽[しみ]にて、名の不朽に伝[ふ]べきにあらず。其外俗の芸と云[ふ]は皆小児の戯なり。只人の学[ぶ]べきは学問と詩歌と書画の外に出[で]ず。是さへ教あしき時は、迂儒学究とて上下を着て井戸をさらへ、火打箱で甘藷を焼[き]、唐の反古にしばられて我身が