きかしづき、初春祝ふ破魔弓も千年を我子へゆづりはと、人ももちゐの鏡より幟画の尉と姥も猶いつまでかいきの松、是も久しき親心のまよいなるべし。或は髪置袴着なんど光陰は鉄砲のごとし。浅之進、七、八歳の頃より寺入の初清書、人の親の心は闇にあらねども、子を思ふ闇に真黒な牛の角文字ゆがみなりも、器用な手筋と誉そやし、早そろ/\と大学は孔氏の遺書にして、初学徳に入[る]にも出るにも人を付[け]置[き]、なをざりならぬ養育にまた生性勝れたれば、人心付[く]頃より洒
掃応対、進退の節も年よりはおとなしく、弓馬の道は云[ふ]もさらなり。立花、茶の湯、鞠、楊弓、詩歌、連俳を始[め]として其余の芸能ぬけめなく、十五歳に成[り]ければ父母つく/\と思ふ、仏に祈[り]て産[み]たる子といひ、又かく人に勝れて発明なる子は、必[ず]短命なるものなり。其後は不思議にも二男三男の出来たるこそ幸[ひ]なれば、何とぞ此子を出家させば、自[ら]長命なるべく、また先祖の菩提をも問[は]せんと其よしかくと告ければ、さのみ望[み]にはあらざれども父母の命もだしがたく、それより世々の旦那寺なれば光明院といへる寺へぞ遣しける。浅之進は