第一とすれば、諸国の色里なんどをも遊行すべし。諸国を経る内には、面白[き]事、かなしき事、幾度も有べけれども、必[ず]/\苦とばし思ふべからず。汝が修行成就して再此土へ帰[り]し時、また対面をなすべし。さらば/\といふ聲は障子に残風の音、浅之進は忙然と光明院の窓の内に寝るともなく覚ともなく、机にかゝりてもとのごとく坐し居たるに、側を見れば、彼の夢中に授し羽扇ばかりぞ残[り]ける。
風流志道軒伝 巻之一終
原文(巻之一)
第一とすれば、諸国の色里なんどをも遊行すべし。諸国を経る内には、面白[き]事、かなしき事、幾度も有べけれども、必[ず]/\苦とばし思ふべからず。汝が修行成就して再此土へ帰[り]し時、また対面をなすべし。さらば/\といふ聲は障子に残風の音、浅之進は忙然と光明院の窓の内に寝るともなく覚ともなく、机にかゝりてもとのごとく坐し居たるに、側を見れば、彼の夢中に授し羽扇ばかりぞ残[り]ける。
風流志道軒伝 巻之一終