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風流志道軒伝ふうりゅうしどうけんでん

原文(巻之一)

風流志道軒伝 巻之一 13

第一とすれば、諸国の色里なんどをも遊行すべし。諸国を経る内には、面白[き]事、かなしき事、幾度も有べけれども、必[ず]/\くるしとばし思ふべからず。汝が修行しゆぎやう成就じやうじゆしてふたゝび此土へ帰[り]し時、また対面をなすべし。さらば/\といふ聲は障子にのこる風の音、浅之進は忙然ぼうぜんと光明院のまどの内に寝るともなくさむるともなく、机にかゝりてもとのごとく坐し居たるに、かたへを見れば、彼の夢中にさづかりし羽扇ばかりぞ残[り]ける。

風流志道軒伝 巻之一終