風流志道軒伝 巻之三
天神七代の始は男女の道をしらざれば、男色ばかりをたのしみて、甚[だ]窮屈なる世界なりしが、伊弉諾、伊弉冊の二神、天の瓊矛を指下してめつたむしやうに滄海を探しかば、其矛の鋒より滴瀝る潮凝て焼塩となる。是よりして、からき浮世といふ事始[り]ける。此時始[め]て合交せんとするに其術をしらず、時に鶺鴒飛[び]来て其尾をぴこ/\搖を味噌豆に研槌、擂盆、始[め]て交の道を得たりと、今時そんな野夫な事にはあらず。書物のとぢ目に生ずる
原文(巻之三)
天神七代の始は男女の道をしらざれば、男色ばかりをたのしみて、甚[だ]窮屈なる世界なりしが、伊弉諾、伊弉冊の二神、天の瓊矛を指下してめつたむしやうに滄海を探しかば、其矛の鋒より滴瀝る潮凝て焼塩となる。是よりして、からき浮世といふ事始[り]ける。此時始[め]て合交せんとするに其術をしらず、時に鶺鴒飛[び]来て其尾をぴこ/\搖を味噌豆に研槌、擂盆、始[め]て交の道を得たりと、今時そんな野夫な事にはあらず。書物のとぢ目に生ずる