風流志道軒伝 巻之二
浅之進は光明院に有[り]てつく/\思ひめぐらすに、彼風来仙人が教の詞、一として理にあたらざる事なく、其上暫寺に居て諸宗の風儀を試に、何れの出家も表をかざり錦繍を身にまとひ、人もなげに高座に登[り]、口に説ところは衆生を導往生の素懐をとげしめんと、極楽の店請にも立[つ]やうに説ちらせば、愚痴文盲の同行どもは、わた持の如来様と信仰し金銀財宝をなげ打[て]ば、御殊勝にとばかりにて、忝[し]ともいはねども、心の内には笑を
原文(巻之二)
浅之進は光明院に有[り]てつく/\思ひめぐらすに、彼風来仙人が教の詞、一として理にあたらざる事なく、其上暫寺に居て諸宗の風儀を試に、何れの出家も表をかざり錦繍を身にまとひ、人もなげに高座に登[り]、口に説ところは衆生を導往生の素懐をとげしめんと、極楽の店請にも立[つ]やうに説ちらせば、愚痴文盲の同行どもは、わた持の如来様と信仰し金銀財宝をなげ打[て]ば、御殊勝にとばかりにて、忝[し]ともいはねども、心の内には笑を