含、其金つかふ胸算用はすれども仏の恩さへ思はず。あげ法事頼[み]て来れば、名聞の盛物も人の見る方は飾れども仏には巻藁ばかりをかざませ、剰むしがへしをくらわせ、朝晩の勤も随分外へ聞へる様に鉦も高くは叩けども、砂かむよりはじゆつない念仏。金持は金遣はず、鑓もちは鑓遣はず、髪結我髪結[は]ず、弁当もち先へ喰[は]ず、とりあげ姥子を産ず、風呂焚は垢だらけ、けんどん屋飯を喰ひ、蓑売は笠でひると、医者の不養生、坊主の不信心、昔よりして然り。出家もと木のまたからも出[で]ず、旨ひ
物の旨ひと、面白ひ物の面白ひは皆同ジ事なり。椎茸、干瓢、長芋、蓮根、南無阿弥豆腐の油揚にて、ゆく/\心にたらざれば、柔和にんにく、葱ぞうすい、むき玉子、松魚の雉焼、厭離江戸前大かば焼、鯵本不生の早鮨をじんばら腹のはれる程に取込[み]、八功徳水のあつがんを引[つ]かけ、雑修自力の心をふり捨、只一心に女郎狂ひ。妙法恋慕の闇に迷、弘誓の船の四ツ手竹輿、内には念彼観音力刀刃段々通へども、本来無一物の客なれば、女郎は見立花はくれなゐと若イ者にもうるさがられ、或