魂。廓には燈籠にさま/\の美を尽、八朔の白妙に約束の客待宵より月見のさわぎ、すがゝきの上づり客、人がらには人形まはし、隣の趣向もうそならぬ、本田組の一むれがまけぬ気の河東ぶし、聲の響は山彦のばち音も清見八景。皆こがれよる船の内、人の心も浮瀬に里神楽三番叟、目出度[く]鈴をまいらせふと、台の葡萄に牽頭が口合、客の羽織を萩の花、芒のやうな目はすれども心の欲の穂に出[づ]る花車、やりて、若イ者、さま/\口を菊月には、九日の節句後の雛、十三夜の月見
には我朝の風流を増[し]、中菊の盛なるには渋谷の隠居が物好を伝ふ。目黒の餅花、神明の生姜市、玄猪十夜の時も過[ぐ]れば、御影講の飾物は銭とらぬ見せものゝごとく、恵美寿講の百万両は商人の虚言をかざる。顔見せの先ぶれは番付売り八方へ散じ、芝居の挑灯はそれ/\の紋を照らす。帯解のすそ長々しく、報恩講の尻もつたて、おの字を千ほど云[ひ]ならべる。口切、ふいごまつりなんども事終[り]て、乙子の餅祝ふ頃より雪霰なんどしげ/\にふりまさりて、風は身をそぐがごとく