少[し]も違ひこれなしと、弁舌をふるふて申[し]上[ぐ]れば、帝をはじめ皆々大[ひ]に感心あり。今に始[め]ぬ日本人の智恵なるかな、いそぎ其用意せよとて唐土中へ触をなし、紙と粘とを集[む]る事山のごとく、大船三十万艘を寄[せ]て追々に積立、経師屋の類はいふに及[ば]ず、素人までも小細工のきゝたる者は召[し]出[だ]し、浅之進にも様々の賜ありて、不二山張抜太夫といへる官を給はり、日和を見定め、三十万艘一度に出船ありけるは、目ざましかりし次第なり。
風流志道軒伝 巻之四終
原文(巻之四)
少[し]も違ひこれなしと、弁舌をふるふて申[し]上[ぐ]れば、帝をはじめ皆々大[ひ]に感心あり。今に始[め]ぬ日本人の智恵なるかな、いそぎ其用意せよとて唐土中へ触をなし、紙と粘とを集[む]る事山のごとく、大船三十万艘を寄[せ]て追々に積立、経師屋の類はいふに及[ば]ず、素人までも小細工のきゝたる者は召[し]出[だ]し、浅之進にも様々の賜ありて、不二山張抜太夫といへる官を給はり、日和を見定め、三十万艘一度に出船ありけるは、目ざましかりし次第なり。
風流志道軒伝 巻之四終