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風流志道軒伝ふうりゅうしどうけんでん

原文(巻之四)

風流志道軒伝 巻之四 13

[し]も違ひこれなしと、弁舌をふるふて申[し][ぐ]れば、みかどをはじめ皆々大[ひ]感心かんしんあり。今に始[め]ぬ日本人の智恵ちゑなるかな、いそぎ其用意せよとて唐土中へふれをなし、紙とのりとを集[む]る事山のごとく、大船三十万艘を寄[せ]て追々に積立つみたて経師屋きやうじやの類はいふに及[ば]ず、素人までも小細工のきゝたる者は召[し][だ]し、浅之進にも様々のたまものありて、不二山ふじさん張抜はりぬき太夫たいふといへる官を給はり、日和ひよりを見定め、三十万そう一度に出船ありけるは、目ざましかりし次第なり。

風流志道軒伝 巻之四終