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風流志道軒伝(ふうりゅうしどうけんでん)

原文(巻之四)

風流志道軒伝 巻之四 04

▼開

飛[び]行けるが、また大なる国あり。此国は穿胸国(せんけうこく)とて、男女とも押[し]なべて皆胸(むね)に穴あり。貴人他所へ行[く]にも竹輿(かご)乗物はなくして、其胸の穴へ棒を通してかきありけどもいたまず、辻々には賎者(いやしきもの)ども棒をたづさへて通りを待[ち]、人をみれば棒やらふ/\となんいへる事、日本のかごやらふといふがごとし。浅之進もかゝれてみんとは思へども、胸に穴なければすべきやうなく、段々奥へ行[く]に随ひて家居も多く賑(にぎやか)なれども、流石(さすが)夷(ゑびす)国にて、人がらは皆賎(いやしき)さまなれば、浅之進を見て上下男女立[ち]つどひ、扨も珍しき風俗、かゝる男の又あるべきにやと引[き]もきらずの人

だかり。日を経るに随[ひ]て国中此沙汰かくれなければ、此国の大孔(たいこう)王の耳に入[り]、官人を以て浅之進を召[さ]れけるに、朝廷(てうてい)の群臣(ぐんしん)、皆浅之進が容貌(ようぼう)の美なるをぞ感(かん)じける。此大王に男子なく当年十六歳の姫宮一人まし/\けるが、浅之進の器量(きりやう)を見給ひ、姫君も大王も此者を婿と定め此国を譲(ゆづり)あたへんと、群臣をも呼[び]集[め]て、さま/\評定有けるが、大王の勅命[ちよくめい]といひ姫君の恋人なれば、皆然るべしと万歳を唱(となへ)、いそぎ浅之進をむかへ装束(しやうぞく)を改[め]んとて、多くの官女達立[ち]つどひ一間なる所へ伴行(ともなひゆき)、いろ/\の綾錦(あやにしき)に金玉を