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風流志道軒伝(ふうりゅうしどうけんでん)

原文(巻之五)

風流志道軒伝 巻之五 09

▼開

ば、却[つ]てすりゑにて事足れりとする、雀(すゞめ)、天告子(ひばり)にもおとるべし。鷹(たか)は死すとも穂(ほ)はつまず、主の目はぬき食ふべからず。速(すみやか)に世をのがるべし。但山林に隠(かくる)るばかりを隠(かくる)るとは云[ふ]べからず、大隠(たいいん)は市中(しちう)にあり。其かくるゝ事一にあらず、賣卜(ばいぼく)にかくれ、医(い)に隠れ、詩にかくれ、哥に隠れ、東方朔(とうぼうさく)は世を金馬門(きんばもん)にのがる。我汝に教(をしゆる)も世界(せかい)の人情をしりたる上にて、世を滑稽(こつけい)の間にさけよと教[へ]しに、汝物にふれて心動(うごき)し故、却[つ]て難儀なる事度々に及べり。人の浮世にまじはることは、只銭湯(せんとう)に入[る]がごとし。穢(げかれ)しゆへはいる事は其

穢を請[け]ん為にあらず、けがれを以て穢を落し、掛湯(かゝりゆ)をして出[で]たる時、我身はいつも清浄(しやう/\)なり。此理を以て世に交らば、我側(かたはら)に袒裼(たんせき)裸裎(らてい)すとも何ぞ我をけがさんや。汚泥(をでい)の蓮花(れんげ)を染(そめ)ざるは、涅(くり)にすれども緇(くろ)まざるの理なり。しかるに世の人、物の為にとらかさるゝが故に我身をそこなひ家を破(やぶる)。遊女狂ひにとらかさるゝばかりをとらかさるゝとは云[ふ]べからず。何事もなづめば害(がい)あり。汝こそ世界中の国々島々をめぐりて能[く]見覚へつらん。何れの国に至りても君臣、父子、夫婦、兄弟、朋友の五の道