表にかざり、ちんぷんかんの屁をひつても知行の米を周の枡ではかり切で渡されなば、其時却[つ]て聖人を恨べし。誰やらが制札の多きをみて国の治らざるをしりたりと云[ふ]がごとく、乱て後に教は出来、病有[り]て後に医薬あり。唐の風俗は日本と違ふて、天子が渡り者も同然にて、気に入[ら]ねば取替[へ]て、天下は一人の天下にあらず、天下の天下なりとへらず口をいひちらして、主の天下をひつたくる不埒千万なる国ゆゑ、聖人出[で]て教[へ]給う。日本は自然に仁義を守る国故、聖人出[で]ずしても太平をなす。唐は
文化にとらかされて、国を韃靼にせしめられ四百余州が罌粟坊主に成[つ]ても、みづから大清の人と覚へて、鼻をねぶつて居る様な大腰ぬけのべらぼうどもなり。日本にも昔より清盛、高時がごとき悪人有[り]ても、天子に成[ら]ふとは思はず。日本で天子を疎略にすると、慮外ながら三尺の童子もだまつて居ぬ気に成[る]といふは忠義正しさ国ゆゑなり。夫故にこそ天子の天子たるものは世界中に双国なし。唐の法が皆あしきにはあらず、されども風俗に応じて教[へ]ざれば、又却[つ]て害あり。日本人は小人島を虫のごとく思へば、また大人は