の忠義。事にのぞんで命を捨るは、臣たる者の職分なり。是に並居る海坊主など日頃過分の知行を賜はり、身には錦繍をまとひ、網代の輿に打乗、御菩提所の上人のとあほがれても、スハ君の御大事にのぞんでは、弁舌を以て我身をかこふ不忠者。私は、漸御門番を相勤、塵より軽足軽なれども、忠義においては高知の方にもおとるべからず。寺坂が昔を思召あてられて、此度の御大事、拙者に仰付られかしと思ひ込で願ふにぞ、龍王面を和げ給ひ、彼が申分といひ力量といひ、用に立べき奴
なれば、此度の役目申付んと、我も頓より気の付ざるにはあらねども、彼は若衆好の沙汰あれば、猫にかつをの番とやらで心にくゝ思ひしかども、只今の忠義にめで、大事の役目申付る。 天窓に水のつゞかんだけ随分ぬかるな、早急げと仰をうけし、水虎が面目飛がごとくに走行。
根奈志具佐三之巻 終