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根南志具佐ねなしぐさ

原文(三之巻)

根南志具佐 三之巻13

忠義ちうぎことにのぞんでいのちすつるは、しんたるもの職分しよくぶんなり。これ並居なみゐ海坊主うみばうずなど日頃ひごろ過分くわぶん知行ちぎやうたまはり、には錦繍きんしやうをまとひ、網代あじろ輿こし打乗うちのり御菩提所ごぼだいしよ上人しやうにんのとあほがれても、スハきみ御大事おだいじにのぞんでは、弁舌べんぜつもつ我身わがみをかこふ不忠者ふちうものわたくしは、やう/\御門番ごもんばん相勤あひつとめちりよりかるき足軽あしがるなれども、忠義ちうぎにおいては高知かうちかたにもおとるべからず。寺坂てらさかむかし思召おぼしめしあてられて、此度このたび御大事おだいじ拙者せつしや仰付おほせつけられかしとおもこんねがふにぞ、龍王りうわうおもてやわらげ給ひ、かれ申分まをしぶんといひ力量りきりやうといひ、ようたつべきやつ

なれば、此度このたび役目やくめ申付まをしつけんと、われとくよりつかざるにはあらねども、かれ若衆わかしゆずき沙汰さたあれば、ねこにかつをのばんとやらでこゝろにくゝおもひしかども、只今たゞいま忠義ちうぎにめで、大事だいじ役目やくめ申付まをしつくる。 天窓あたまみづのつゞかんだけ随分ずいぶんぬかるな、はやいそげとおほせをうけし、水虎かつぱ面目めんぼくとぶがごとくにはしりゆく

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