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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(三之巻)

根南志具佐 三之巻13

▼開

の忠義(ちうぎ)。事(こと)にのぞんで命(いのち)を捨(すつ)るは、臣(しん)たる者(もの)の職分(しよくぶん)なり。是(これ)に並居(なみゐ)る海坊主(うみばうず)など日頃(ひごろ)過分(くわぶん)の知行(ちぎやう)を賜(たま)はり、身(み)には錦繍(きんしやう)をまとひ、網代(あじろ)の輿(こし)に打乗(うちのり)、御菩提所(ごぼだいしよ)の上人(しやうにん)のとあほがれても、スハ君(きみ)の御大事(おだいじ)にのぞんでは、弁舌(べんぜつ)を以(もつ)て我身(わがみ)をかこふ不忠者(ふちうもの)。私(わたくし)は、漸(やう/\)御門番(ごもんばん)を相勤(あひつとめ)、塵(ちり)より軽(かるき)足軽(あしがる)なれども、忠義(ちうぎ)においては高知(かうち)の方(かた)にもおとるべからず。寺坂(てらさか)が昔(むかし)を思召(おぼしめし)あてられて、此度(このたび)の御大事(おだいじ)、拙者(せつしや)に仰付(おほせつけ)られかしと思(おも)ひ込(こん)で願(ねが)ふにぞ、龍王(りうわう)面(おもて)を和(やわら)げ給ひ、彼(かれ)が申分(まをしぶん)といひ力量(りきりやう)といひ、用(よう)に立(たつ)べき奴(やつ)

なれば、此度(このたび)の役目(やくめ)申付(まをしつけ)んと、我(われ)も頓(とく)より気(き)の付(つか)ざるにはあらねども、彼(かれ)は若衆(わかしゆ)好(ずき)の沙汰(さた)あれば、猫(ねこ)にかつをの番(ばん)とやらで心(こゝろ)にくゝ思(おも)ひしかども、只今(たゞいま)の忠義(ちうぎ)にめで、大事(だいじ)の役目(やくめ)申付(まをしつく)る。 天窓(あたま)に水(みづ)のつゞかんだけ随分(ずいぶん)ぬかるな、早(はや)急(いそ)げと仰(おほせ)をうけし、水虎(かつぱ)が面目(めんぼく)飛(とぶ)がごとくに走(はしり)行(ゆく)。

根奈志具佐(ねなしぐさ)三之巻(さんのまき) 終(おはり)