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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(三之巻)

根南志具佐 三之巻02

▼開

なば、其祟(そのたゝり)は、三途川(さうずかは)の川(かは)ざらへか極楽(ごくらく)の御修復(ごしゆふく)など仰付(おほせつけ)られては、近年(きんねん)は押(おし)なべて金魚(きんぎよ)銀魚(ぎんぎよ)の手(て)はまはらず、ほう/\より緋鯉(ひごひ)にせつかれ、世間(せけん)のしびも白魚(しらうを)のひしことつまりし時節(じせつ)なれば、甚(はなはだ)難儀(なんぎ)たるべし。若(もし)逆鱗(げきりん)つよき時(とき)は、 我々(われ/\)此(この)水中(すゐちう)を離(はなれ)ていかなる所(ところ)へか追立(おひたて)られん。もし三十三天(さんじふさんてん)の内(うち)などへ左遷(させん)などゝある時(とき)は、 道中(だうちう)にて皆々(みな/\)枯魚(ひもの)となるべければ、仮初(かりそめ)ならぬ一大事(いちだいじ)。急(いそ)ぎ菊之丞(きくのぜう)を召捕(めしとる)べき思案(しあん)あるべしとの仰(おふせ)。一(いち)の上座(じやうざ)に座(ざ)し居(ゐ)たる鯨(くじら)ゆう

/\と立出(たちいで)申(まをし)けるは、仰(おほせ)の通(とほ)り御上(おかみ)の御大事(おだいじ)、 此時(このとき)なり。私儀(わたくしぎ)は身(み)不肖(ふせう)ながら家(いへ)がらたるを以(もつ)て、代々(だい/\)大老(たいらう)職(しよく)相勤(あひつとめ)、是(これ)に並居(なみゐ)る鰐(わに)、鯋魚(ふか)なんども家老(からう)の座(ざ)に連(つらな)り、しびまぐろなどは用人(ようにん)を勤(つと)むれば、彼等(かれら)とも内々(ない/\)評議(へうぎ)致(いた)せし処(ところ)、所詮(しよせん)人界(にんがい)の様子(やうす)委(くはし)く聞届(きゝとゞけ)たる上(うへ)ならでは謀(はかりごと)は出(いで)まじく存付(ぞんじつき)、手下(てした)の者共(ものども)の内(うち)にて才覚(さいかく)ある者(もの)どもを忍(しの)びに遣(つかは)し置(おき)たれば、定(さだめ)て様子(やうす)相知(あひし)れなんと申(まをす)詞(ことば)も終(おは)らぬ処(ところ)へ御注進(ごちうしん)と呼(よば)はり/\、真黒(まつくろ)になりてころ/\とこけ出(いづ)るは、本所辺(ほんじよへん)に住居(すまゐ)する業平蜆(なりひらしゞみ)にてぞ