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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(三之巻)

根南志具佐 三之巻07

▼開

千万(せんばん)、急度(きつと)申渡(まをしわたす)べし。今(いま)一人(いちにん)忍(しの)びに入(いり)しは、 兼(かね)て上(うへ)にも御存(ごぞんじ)の龍蝦(かまくらゑび)なり。年(とし)罷(まかり)寄(より)たれども、酒(さけ)はそこぬけ、ぴんしやんとはねる所(ところ)が当世(たうせい)のひんぬきなりとて、留守居(るすゐ)役(やく)相勤(あひつとむ)れば、元日(ぐわんじつ)より人間(にんげん)にまじはり、諸寄合(しよよりあひ)、無尽会(むじんくわい)、吉原(よしはら)、 堺町(さかひてう)、岡場所(をかばしよ)を始(はじめ)兎角(とかく)向(むか)ふへ廻(まは)りたがり、年(とし)の暮(くれ)の浅草市(あさくさいち)まで、年中(ねんぢう)人(ひと)にすれるが役目(やくめ)なれば、定(さだめ)て聞届(きゝとゞけ)参(まゐら)んと申上(まをしあが)る折(おり)から、龍蝦(かまくらゑび)只今(たゞいま)罷(まかり)帰(かへり)候(そろ)と案内(あんない)させ、例(れい)のごとく真赤(まつか)になり腰(こし)をかゞめて立出(たちいづ)れば、龍王(りうわう)御覧(ごらん)じ、様子(やうす)いかにと尋(たづね)給へば、さん候(ぞふろ)、私儀(わたくしぎ)は堺町(さかひてう)からふき屋町(やてう)、楽屋(がくや)

新道(しんみち)、よし町(てう)辺(へん)へ入込(いりこみ)、能々(よく/\)様子(やうす)承(うけたまは)り候処(そろところ)、 来(きた)る十五日、菊之丞(きくのぜう)を始(はじめ)として荻野(おぎの)八重桐(やへぎり)なんど船遊(ふなあそ)びに出(いづ)るよし、微塵(みじん)毛頭(もうとう)相違(さうい)なしと詞(ことば)少(すくな)に申上(まをしあぐ)れば、龍王(りうわう)甚(はなはだ)悦(よろこ)び給ひ、流石(さすが)留守居(るすゐ)役(やく)を勤(つとむ)る程(ほど)あつて世間(せけん)の穴(あな)を能(よく)知(し)つて、堺町(さかひてう)とは気(き)が付(つい)たり。神妙(しんめう)の働(はたらき)と御褒美(ごはうび)に預(あづかり)て髭喰(ひげくひ)そらしてうづくまる。龍王(りうわう)、鰐(わに)、鯋魚(ふか)を近(ちか)/\召(めさ)れ、 此度(このたび)の役目(やくめ)汝等(なんぢら)罷(まかり)向(むか)ふべしと有(あり)ければ、両人(りやうにん)ハツトひれ伏(ふし)申(まをし)けるは、凡(およそ)人(ひと)を取事(とること)、私(わたくし)どもにつゞくものなし。海中(かいちう)の儀(ぎ)にて候(さむら)はゞ、いなみ申(まをす)べきにあらねども、船遊(ふなあそび)と承(うけたまは)れば両国(りやうごく)永代(えいたい)の