の祝は蜆では済されぬ、かばやきでも買ふとの事故、かつぎし男ふせう/\にふりかたげ、又二三丁程行て、四辻を左へまがれば、今度はそこら大さわぎ。大どろぼうめと抓合、組んずこけつの人くんじゆ。格子はめり/\、皿鉢はぐわら/\、手桶の輪がきれて水が飛ば、畳からは黒煙、腕に彫物した男ども、大はだぬぎに成てのさわぎ。聞た処が姦夫出入。初は今も切か揬かと見る内に、イヤ親分じやの、割を入るのと、兎や角と云ふ内に、酒五升とけんどん十人前と下らぬ文言な誤証文一通で、討果ほどの出入がついくにや/\と
むつ折して、我等をかつぎし男めも近付かして仲ヶ間へ入、茶碗でしたゝか引掛て千鳥足にて帰がけ、馴染の内へ立寄れば、死だ息子の七回忌とて、天窓に輪の入た道心が、きやり聲をはりあげて鉦たゝいて百万遍世帯仏法腹念仏、豆腐のぐつ煮に干大根のはり/\で済せば蜆はいらぬとはねられて、かつぎし男腹を立、あたけたいな、いま/\しいと帰りに川へさらへ込みしを幸と、干汐につれて息を切て帰りし、と語もはてぬ処へ、背の角をおふて一文字に成て来るものは拳螺にてぞありける。是も忍びの役