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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(三之巻)

根南志具佐 三之巻06

▼開

人(にん)なれば、龍王(りうわう)見(み)給ひ、人間界(にんげんかい)の様子(やうす)いかに/\とせめ給ふ。其時(そのとき)さゞえにじり出(いで)て申(まをし)けるは、私(わたくし)は小田原町(をだはらてう)から通(とほ)り筋(すぢ)を一(いつ)ぺん廻(まは)り候(さふろ)が、先(まづ)珍(めづら)しきは石町(こくてう)の角(かど)に朝鮮人(てうせんじん)行列(ぎやうれつ)付(つき)の看板(かんばん)をおびたゞしくかざりたて、売子(うりこ)大勢(おほぜい)にて売(うり)あるき、又(また)珍説(ちんせつ)は、旦那(だんな)のねつた膏薬(かうやく)売(うり)が奥州(おうしう)の相馬(さうま)にて主(しゆう)の敵(かたき)を討(うち)しとの取沙汰(とりさた)より外(ほか)、さして替(かは)りたる事(こと)も承(うけたまは)らずと申上(まをしあぐ)れば、龍王(りうわう)大(おほい)にいかりをなし、汝等(なんぢら)評議(へうぎ)は何(なに)としてヶ様(かやう)な役(やく)に立(たゝ)ず共(ども)を忍(しの)びには遣(つかは)せしぞ。此方(このはう)の入用(にふよう)は菊之丞(きくのぜう)が船遊(ふなあそび)の日限(にちげん)なるに、其事(そのこと)は聞(きか)ずして役(やく)にも立(たゝ)ぬ事(こと)

どもを見(み)て帰(かへ)りしとて、いかめしそふに申(まをす)段(だん)、 言語(ごんご)道断(どうだん)、につくいやつ。是(これ)と云(い)ふも、家老(からう)用人(ようにん)共(ども)が面々(めん/\)の身勝手(みがつて)計(ばかり)を考(かんが)へて、下々(しも/\)の難儀(なんぎ)はかへりみず、鰮(いわし)やすばしりの類(るゐ)を沢山(たくさん)してやらふと計(ばかり)心(こゝろ)がけて、役儀(やくぎ)をおろそかにするゆゑ、かゝる大事(だいじ)に魚(さかな)らしきものもやらず、さゞえや蜆(しゞみ)をやりし段(だん)以(もつて)の外(ほか)の不届(ふとゞき)と、鱗(うろこ)をさか立(だて)怒(いか)り給へば、其時(そのとき)鯨(くじら)鰭(ひら)をうごかし、仰(おふせ)御尤(ごもつとも)にて候得共(さむらへども)、遣(つかはす)べきもの詮議(せんぎ)致(いた)せど他(た)の者(もの)は水(みづ)を離(はな)れては働(はたらく)こと相(あい)ならねば、水(みづ)を出(いで)て息(いき)の長(ながき)ものを選(えら)み出(いだ)せし処(ところ)に御用(ごよう)に立(たゝ)ざりし段(だん)不届(ふとゞき)