の半にて河豚を喰ふ時ならざれば、此御評議御無用ならんと申上れば、龍王もせんかたなく、無用の長詮議に時うつるとも、所詮埒は明まじければ、此上は、この龍王一人自身立向ひ、 雲を起し雨を降し、菊之丞を引抓で閻广王へ奉んと、波を蹴立て立給ふ。一座の鱗前後をかこひ、鶏をさくに何で牛の刀を用なん、 今一御評議と留ても留らず。前後左右を蹴飛し、 黒雲を起し出給ふ処に、御門に扣へたるものつゝと出、御腰をむづとだく。ふりほどかんとし給へども、中々容易動得ず、御所の五郎丸にては
よもあらじ。何者なるぞ爰をはなせとふりむき給へば、天窓に皿を戴たる水虎にてぞ有ける。 龍王は御聲高く、己下郎の分として推参至極と、御手をふり上ヶ打んとし給ふ処を大勢の鱗ども左右の御手にすがり付、御とゞめ申せしは、 水虎が君への忠義なれば、 悪くばし聞し召れそ、先々御座に御直りと無理に引立、もとのごとく御座になをせば、龍王猶も怒り給ふを、水虎御前ににじり寄、天窓の水もこぼるゝばかり涙をはら/\とながし、下郎の身をかへり見ず無礼せしも、寸志