お江戸のベストセラー

根南志具佐ねなしぐさ

原文(二之巻)

根南志具佐 二之巻10

りの権大ごんだい僧都そうづくわんにのぼるやう心得こゝろえて、給金きふきんばかりたかなりて、修行しゆぎやうすべきげいまなばず、兎角とかくおんなおもつかるゝを第一だいいちとし、われより目上めうへなるをもなし、味噌みそあぐればよいことゝ心得こゝろえて、 作者さくしやことばをももちひず、たとひ一花いつくわおもつきにて評判へうばんとるといへども、そのおとろへのはやきこと鉄砲てつぽうたまかけたるがごとし。是皆これみなこゝろもちふことうときゆへなり。いまむかし沢村さわむら小伝次こでんじといへる若女形わかおんながた河内かはち藤井寺ふぢゐでら開帳かいてうまゐりて小山こやまといふところ宿しゆくしけるが、小伝次こでんじいはく一日いちにち竹輿かごにゆられてちの

みちがおこりしといへるを、つれにてありける竹中たけなか半三郎はんざぶらう小松こまつ才三郎さいざぶらう尾上おのへ源太郎げんたらうなどわらつていはく、いかに女形おんながたなればとておとこ血暈ちのみちとはとはらをかゝへけるを、其座そのざ西鶴さいくわく居合ゐあはせけるが、おほいかんいはくおさなきよりなりことばも女のごとくならんと日頃ひごろにたしなみしより、仮初かりそめ頭痛づつう血暈ちのみちおぼえしは、さて/\しほらしきことなりといへるとなり。 其業そのわざ専一せんいちつとむるものは、皆々みな/\かくのごとくありたきものなり。しから敵役かたきやくつねひとをいじめ、あるひ芝居しばゐでするごとき悪工わるだくみをして二三度にさんど