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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(二之巻)

根南志具佐 二之巻04

▼開

らふ一決(いつけつ)せざりし所(ところ)に、近松氏(ちかまつうじ)の祖(とほつおや)思兼神(おもひかねのかみ)、進出(すゝみいで)宣(のたま)ひけるは、中(なか)/\外(ほか)の事(こと)にて御機嫌(ごきげん)は直(なほり)給ふまじ。太神(おほんがみ)常(つね)に狂言(きやうげん)を好(このみ)給へば、岩戸(いはと)の前(まへ)にて狂言(きやうげん)を初(はじめ)なば、極(きはめ)て岩戸(いはと)を開(ひら)かせ給ふべしと申(まをし)ければ、皆(みな)/\至極(しごく)尤(もつとも)なり、是(これ)は慥(たしか)に当(あたり)そふな趣向(しゆこう)なりとて、扨(さて)役者(やくしや)をぞ撰(えらま)れける。先(まづ)立役(たちやく)、荒事(あらごと)、角(つの)かつらにての一枚(いちまい)看板(かんばん)、手力雄神(たちからをのかみ)、丹前(たんぜん)所作事(しよさごと)、やつし色事師(いろごとし)には天児屋命(あまつこやねのみこと)、敵役(かたきやく)には太玉命(ふとだまのみこと)、わけて其頃(そのころ)名(な)も高(たか)き黒極(こくゞく)上々吉(きち)、女房方(にようぼがた)、娘方(むすめがた)、おやま、所作事(しよさごと)引(ひつ)くるめて、若女(わかおんな)

形(かた)のてつぺん天鈿女命(あまのうずめのみこと)、其外(そのほか)居(ゐ)なり、新下(しんくだ)り、惣座中(そうざちう)残(のこら)ず罷出(まかりいで)、第四番目(だいよばんめ)まで仕(つかまつり)御目(おんめ)にかけまするとのはり紙(がみ)、明日(みやうにち)顔見(かほみ)せと聞(きゝ)つたへ、諸見物(しよけんぶつ)山(やま)のごとく詰懸(つめかく)れば、芝居(しばゐ)の内(うち)より茶屋(ちやや)の門(かど)/\、それ/\のひいきの定紋(ぢやうもん)付(つけ)たる挑灯(てうちん)は星(ほし)のごとく。天香山(あまのかぐやま)の五百箇(いおつ)真坂樹(まさかき)を植(うへ)て気色(けしき)をかざり、常世(とこよ)の長鳴鳥(ながなきどり)を吸(すひ)ものにして呑掛(のみかく)れば、常闇(とこやみ)の世(よ)も明(あけ)たる心地(こゝち)。神(かみ)/\はいさみをなし、思(おも)ひ/\の積物(つみもの)、天神組(てんじんぐみ)地神組(ちじんぐみ)と左右(さいう)にわかち、花(はな)をかざり、きらを尽(つくし)けるが、いつあくるともなく