お江戸のベストセラー

根南志具佐ねなしぐさ

原文(二之巻)

根南志具佐 二之巻03

結句能けつくよいなどゝてるものもおほかりしが、次第しだい世間せけんかまびすしくなりければ、のちには遊者あそぶものもなく、大夫たいふ格子かうし、さんちやより河岸かし女郎ぢよらういたるまで、さしもおほかりし馴染なじみきやくも、科戸しなどかぜあま八重雲やへぐもふきはなつことのごとく、繁木しげきもと焼鎌やいがま敏鎌とがま打掃うちはらことのごとく、こととふものもあらざれば、忘八くつわ夫婦ふうふ頭痛づつう八百はつぴやく、やりて、わかものなどを呼寄よびよせ、コリヤマアどふしたらよかろふと四人よにんひたひしわをよせ、やつみゝをふりたてて、いろ/\評議へうぎせんもなく、くちもろ/\のうはさはすれ

どももろ/\きやくず。かりある茶屋ちやや船宿ふなやどはらひ給へきよめ給へと、せがむべき相手あいてもなく、牽頭たいこもらつた紙花かみばなも、坎艮かんごん震巽しんそんあたつたとの悔言くやみごと其外そのほか上下じやうげおしなべて勝手かつてによいといふものは、 たゞねずみ朝寝好あさねすきおとこよりほかはなし。これでは世間せけんさゝほうさになりてたまるまいと、八百万やほよろづかみあめやす河辺かはべたちつどひいろ/\評義へうぎありけれども、さしてもつともらしきこともきこえず。あるひ石屋いしや入札にふさつさせ、天窟屋あめのいわや切開きりひらかんといへば、イヤ/\もし太神おほんがみいかり給ひて飛去とびさりて、はなはだ難渋なんじふなるべしと評議へうぎ