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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(二之巻)

根南志具佐 二之巻03

▼開

結句能(けつくよい)などゝて来(く)るものも多(おほ)かりしが、次第(しだい)に世間(せけん)かまびすしくなりければ、後(のち)には遊者(あそぶもの)もなく、大夫(たいふ)、格子(かうし)、さんちやより河岸(かし)女郎(ぢよらう)に至(いたる)まで、さしも多(おほ)かりし馴染(なじみ)の客(きやく)も、科戸(しなど)の風(かぜ)の天(あま)の八重雲(やへぐも)を吹(ふき)はなつことのごとく、繁木(しげき)が本(もと)を焼鎌(やいがま)の敏鎌(とがま)を以(も)て打掃(うちはら)ふ事(こと)のごとく、こととふ者(もの)もあらざれば、忘八(くつわ)夫婦(ふうふ)は頭痛(づつう)八百(はつぴやく)、やりて、若(わか)い者(もの)などを呼寄(よびよせ)、コリヤマアどふしたらよかろふと四人(よにん)額(ひたひ)に皺(しわ)をよせ、八(やつ)の耳(みゝ)をふり立(たて)て、色(いろ)/\評議(へうぎ)の詮(せん)もなく、口(くち)に諸(もろ)/\の噂(うはさ)はすれ

ども目(め)に諸(もろ/\)の客(きやく)を見(み)ず。借(かり)の有(ある)茶屋(ちやや)、船宿(ふなやど)は払(はらひ)給へ清(きよ)め給へと、せがむべき相手(あいて)もなく、牽頭(たいこ)が貰(もら)つた紙花(かみばな)も、坎艮(かんごん)震巽(しんそん)の卦(け)に当(あたつ)たとの悔言(くやみごと)。 其外(そのほか)、上下(じやうげ)押(おし)なべて勝手(かつて)によいといふものは、 只(たゞ)鼠(ねずみ)と朝寝好(あさねすき)の男(おとこ)より外(ほか)はなし。是(これ)では世間(せけん)さゝほうさになりてたまるまいと、八百万(やほよろづ)の神(かみ)、 天(あめ)ノ安(やす)ノ河辺(かはべ)に会(たちつどひ)て色(いろ)/\評義(へうぎ)ありけれども、さして尤(もつとも)らしき事(こと)もきこえず。或(あるひ)は石屋(いしや)に入札(にふさつ)させ、天窟屋(あめのいわや)を切開(きりひらか)んといへば、イヤ/\若(もし)太神(おほんがみ)怒(いかり)給ひて飛去(とびさり)て、甚(はなはだ)難渋(なんじふ)なるべしと評議(へうぎ)さ