相代をも知らず。初の程は行燈挑灯にても用を弁じけるが、何が家々にて昼夜不断とぼす事なれば、俄に蝋燭油の切もの、次第に直段は高間が原。神の力にも自由にならぬは金銀なれば、中以下にては挑灯とぼすことなどもならざれば、 馬士の神、車引の神などは、あられぬ所へ引かけて、神ンたゝきに扣合、神抓に抓合、町/\小路/\にて喧𠵅のたゆる隙もなし。されども闇夜の盲打、誰相手と云ふ事も知れず、公へ持出しても、くらがりに牛つないだ様にて是非のわかちも
付がたければ、先世の中の明るく成までは名主の神、大家の神へ御預との事なり。扨また世間のつきあひ等は、麁服にても目に立ねば、始末にはよけれども、或はいつ何日に御出合申べしといふ事も正真の闇夜の鉄砲にて、あてどもなく、物を洗ても火であほるより外は干べき手だてもあらざれば、士農工商の神/\、業を勤る事もならず。中にも色里にては、いつを夜みせと時も知れねば、物日などゝいふ事もなく、花の時やら燈籠やら、わけもなくなりゆき、客も初の程はしつぽりとして