約束の刻限に成ければ、木戸口はどや/\、もや/\、錐を立るの地もなく、誠に天地開闢以来かゝる大仕組はあるまいと、知るも知らぬも、老たるも若きも我一との人群衆。式三番も終り、お定の口上も相済ければ、是より天浮橋瓊矛日記、一番目より段々狂言に実がいり、程なく第三番目に至て天児屋命は磤馭慮丸、本名伊弉諾尊の役、天鈿女命は傾城浮橋、本名伊弉冊尊、つもり/\し揚代三百両の金の代に、天瓊矛を揚屋が方へとられしを、太玉命は
大戸之道尊の役にて、両人の瓊矛を詮議し給ふ検使の役。此所にて検使のつよさ、両人の愁の所、諸見物は感に堪兼、イヨおらが鈿女のよ、 イヨ児屋様、太玉様など、桟敷も下も聲/\に暫鳴もしづまらず。此時、天照太神聞し召て、下地は好なり、たまられず御手を以て磐戸を細目に開て是を窺す。折よしと三人の尊立寄て岩戸を明んと手をかけ給へば、太神はたてんとし給ふ。互にえいやと引力勝負は更に付ざりけり時に、向の切幕より、暫/\と掛