北条時政は、もぐさ屋の息子が頼朝であることをとっくに知っていたので、政子姫との仲を認めて、さっそく祝言をあげて祝う。
さて、政子姫のご病気がすぐにも全快したのは永持道意のもぐさを三升据えたためなので、時政はもぐさ屋に「三升の紋」をくださり、さらに平氏の「平」の字を褒美として与えた。
さてさて、政子姫が三升もの灸を退屈することなく据えられたのは、山内屋孫兵衛の絵草紙を夢中になってご覧になったからなので、孫兵衛には道意と同様の功として、江ノ島弁財天より賜わりし北条の「三つ鱗の紋」を褒美としてくだされた。
時政「長く定紋にせよ。」
孫兵衛「不肖のわたくし共へ鱗形のご紋、平の字を賜わること、身に余りましてありがたく存じます。」
画工 恋川春町 戯作[春町 印]