頼朝公は父や兄たちともはぐれ、石山寺から伊吹山へと迷い込み、運もつき果て山中を一人さまよっていた。
それを道意が見つけて、もしや頼朝公ではと思ってたずねると──まさしくその通り。道意は大いに喜んで、頼朝公をかくまって食事の世話をした。
しかし喜びもつかの間、平家の侍、弥平兵衛宗清が後を追っかけて来て、頼朝公を捕らえてしまう。
道意「なにとぞ、お命が助かるようにお取りなし願います。頼りなき身の上、どこまでもつき従って見届けてあげたい。」
宗清「それがしとて、殺すには忍びない。池禅尼へ願い出れば、命ばかりは助かるかも知れん。おぬし、それほど想っているなら、それがしと共に都へ行き、もし池どののお情けで流罪にでもなったら、それにつき従って行く末を見届けよ。武士でもない町人のことなら清盛公も見逃してくれるだろう。」
頼朝公は、池禅尼の歎願で伊豆国への配流と決まった。道意は、これはいよいよ池洲稲荷のお告げどおりだと大いに喜び、六波羅へ頼朝公のお供を願い出て、支度を整え伊豆へと旅立つ。
住み慣れし都の富士を後に見て
雪の斑気へ四方白く
夕日照りそう四方の赤
これを合わせて八景や
勢田の長橋、勢田うなぎ
ぬらりくらりと行くほどに
なごり近江の源五郎
ふな路を渡り山を越え
少しはうさを忘れなさる
道意「今夜のお泊りでは、飯盛を呼びしましょう。君にもちょっとお楽しみ。しかし、歩き通しで足の鼻緒ずれにはお気をつけなされ。」