腰元せきやは人目を忍んで、もぐさ屋の息子をコッソリ姫君のところに連れて来た。さらに気をきかせ、自分はその場を外して二人だけにする。
政子「わたくしの病気は、そなたを想っての恋わずらい。灸を三升もがまんしたのも、そなたへの想いの証し──なのに、そなたの心がつれなければ、いくら灸を据えたとて、この病いが治ろうか…。」
頼朝「お気持ちはありがたいのですが、時政さまに知れたら、お身のためになりますまい。ここは、お放しなされませ。」
北條時政が、この様子をのぞき見している。
「まったく、小娘と小袋には油断も隙もない。しかし、きゃつは源氏の正統義朝の三男、頼朝と聞く。ムコにとっても不足なし。」