お江戸のベストセラー

三升増鱗祖みますますうろこのはじめ

10

三升増鱗祖 10

孫兵衛はいなりの御つげにて
もぐさやのわか衆はより朝
公なりといふ事をかねて
しりたる事な
れは何とそ北
条のひめぎみ
にしのびあはせ
ゆく/\は
時政のむこ
となし世に
出さん
とおも

こしもとせきやと
しめし合せ此度
姫君御きう治の御
もぐさの御用を道意に仰付られ
下されよとおくかろうへ願ふ

切もぐ
さの
義は
しごく
御てう
ほう
其上
せい
ほうが
かくべつ
でご
ざり
ます

しんびようのねがひ新五左衛門
とくしん申た早々切もぐさ
をたくさんに持参いたせと
その道意とやらんに其方
すぐ/\申傳へよ
それはさいわいの事だ

孫兵衛もぐさやへ来り政子姫の
病氣の事ならびにもぐさの御用
仰付けらるゝ事をくはしくはなし
いけす稲荷の御つげありてより
とも公なりとしりたる事迄
初めて道意に物がたりし此時
をさいわいに力をあはせて
よりとも公を世に出し奉らん
といふ
道意孫兵衛がこゝろざしを
かんじより朝公よりあづか
りし白はたをとり出し
孫兵衛に見せてしんてい
をあかす

おたがいにもとは
御けらいすぢ
めうりのため
心を合せて忠義
をつくしませう
弓矢をすてた今
の身なれど心はする
どい千まいどうしうは
べは丸いなぶくらに
たちまち平家をうち
ぎりのざりはわすれず
うそつかずそこで
本屋でござり
やす

かうした所は矢口のわたりのどう
ねんといふきみなれどわれらは
もはや丁人となりたればふたゝ
びきつたりはつたりは氣がなし
たゞあなたを世に出して上たい
ぞんねんさわれらが切つたりはつ
たりはもぐさを切たりふたの紙を
はつたりじや