①
孫兵衛はいなりの御つげにて
もぐさやのわか衆はより朝
公なりといふ事をかねて
しりたる事な
れは何とそ北
条のひめぎみ
にしのびあはせ
ゆく/\は
時政のむこ
となし世に
出さん
とおも
ひ
②
こしもとせきやと
しめし合せ此度
姫君御きう治の御
もぐさの御用を道意に仰付られ
下されよとおくかろうへ願ふ
③
切もぐ
さの
義は
しごく
御てう
ほう
其上
せい
ほうが
かくべつ
でご
ざり
ます
④
しんびようのねがひ新五左衛門
とくしん申た早々切もぐさ
をたくさんに持参いたせと
その道意とやらんに其方
すぐ/\申傳へよ
それはさいわいの事だ
⑤
孫兵衛もぐさやへ来り政子姫の
病氣の事ならびにもぐさの御用
仰付けらるゝ事をくはしくはなし
いけす稲荷の御つげありてより
とも公なりとしりたる事迄
初めて道意に物がたりし此時
をさいわいに力をあはせて
よりとも公を世に出し奉らん
といふ
道意孫兵衛がこゝろざしを
かんじより朝公よりあづか
りし白はたをとり出し
孫兵衛に見せてしんてい
をあかす
⑥
おたがいにもとは
御けらいすぢ
めうりのため
心を合せて忠義
をつくしませう
弓矢をすてた今
の身なれど心はする
どい千まいどうしうは
べは丸いなぶくらに
たちまち平家をうち
ぎりのざりはわすれず
うそつかずそこで
本屋でござり
やす
⑦
かうした所は矢口のわたりのどう
ねんといふきみなれどわれらは
もはや丁人となりたればふたゝ
びきつたりはつたりは氣がなし
たゞあなたを世に出して上たい
ぞんねんさわれらが切つたりはつ
たりはもぐさを切たりふたの紙を
はつたりじや