①
				かくて道意はより
				朝をともなひいづ
				の国につきしかば
				いけすいなりのかた
				わらにすみてもと
				よりなれしもぐ
				させうばいをし
				けるにそのころ東
				国に切
				もぐさ
				といふ物
				なかりければ
				てうほうなる物
				なりとてことの
				外はやり大小
				めうゟおびたゝし
				く御用仰付られ
				あきないはん
				じやうしける
				かわらけ二ツ
				を合せつゝ
				百てう入りを
				ぞこしらへける
				これきり
				もぐさの
				はじめと
				かや
			
②
				より
				とも公
				その比は
				若しゆさか
				りにてうつ
				くしければ
				しよ人たちとま
				りて故人盛府に
				そのまゝなりといひ
				ふらしけるより道意
				おもひつきにてもぐさの
				はんこうを市松
				ぞめにぞ
				したりける
			
③
				ずいぶん御せい出されませ
				外へてまによりを出すゟも
				内でいたせば大ぶんわりが
				よふこさります
				それがすむと小児を仕入ねば
				なりませぬ
			
④
				そのころもぐさやがをちつきしとなりに
				山内や孫兵衛といふもの有これもゆへある
				ものなりしがたび/\の兵らんにをち
				ぶれ伊豆の国へ引こみいけるがもと
				より才智あるものなりければ
			
⑤
				いにしえ今の
				事をかきつゞり
				双紙となし又は
				むかしの名将
				ゆうしのすがた
				を紙にすりさい
				しきをなして
				あきなひけれは
				ことの外はやり
				ける其ころは
				しよ人此ゑを
				うるしゑと
				いひてうれし
				がりうれること
				かぎりなし
			
⑥
				此おもひ
				つきは
				ばつと
				をちが
				きそうな
				もの
				じや
				が
			
⑦
				となりは
				大ぶん
				あきないが
				ある
				まけては
				ならぬが
			
Ⓐ
				回陽堂
			
Ⓑ
				山内屋
			

