なき人(ひと)を恋(こひ)したふ。されば古歌(こか)にも、汭潭(いりぶち)に偃(ふし)たる公(きみ)をけふ/\と来(こ)んと待(まつ)らん、妻(つま)がかなしも、と詠(えい)ぜしも我身(わがみ)の上(うへ)とかきくどく歎(なげき)は浜(はま)の真砂(まさご)にて、かきつくされぬ筆(ふで)の海(うみ)、聞人(きくひと)袖(そで)をぞしをりけり。 根奈志具佐(ねなしぐさ)五之巻(ごのまき) 大尾(たいび)