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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(五之巻)

根南志具佐 五之巻04

▼開

と、我々(われ/\)が地頭(ぢとう)難陀(なんだ)龍王(りうわう)へ勅定(ちよくぢやう)下(くだ)り、龍宮(りうぐう)にて色々(いろ/\)評議(へうぎ)有(あり)ける処(ところ)を某(それがし)命(いのち)に懸(かけ)て申上(まをしあげ)、漸(やう/\)と此役目(このやくめ)を承(うけたまは)り、何(なに)とぞ御身(おんみ)を連行(つれゆか)んと忠義(ちうぎ)一図(いちず)の謀(はかりごと)。乗捨(のりすて)し船(ふね)を盗(ぬすみ)、かく侍(さむらい)の姿(すがた)と変(へん)じ、神変(じんべん)を以(もつて)俳諧(はいかい)の句(く)などを吟(ぎん)じ、近寄(ちかより)て御身(おんみ)を引立(ひつたて)、水中(すゐちう)へ飛入(とびいら)んと兼(かね)てよりはかりしが、 思(おも)はずも御身(おんみ)の器量(きりやう)に心(こゝろ)まよひ、わりなき恋(こひ)をいひ懸(かけ)しに、君(きみ)が情(なさけ)の深緑(ふかみどり)、松(まつ)に千年(ちとせ)と藤浪(ふぢなみ)の、 思(おも)ひまどひし恋衣(こひごろも)、互(たがひ)の帯(おび)の打(うち)とけし、其(その)むつごとのわすられず、又(また)の逢瀬(あふせ)と兼言(かねごと)の

兼(かね)て工(たくみ)し我心(わがこゝろ)も、きのふに替(かはる)飛鳥川(あすかがは)、淵(ふち)と瀬川(せがは)の君(きみ)ゆゑに、我身(わがみ)を捨(すつ)る覚悟(かくご)なれば、是(これ)より我(われ)は龍宮(りうぐう)へ帰(かへる)とも、菊之丞(きくのぜう)を取得(とりうる)事(こと)中々(なか/\)力(ちから)およばずと申上(まをしあげ)なば、龍神(りうじん)より罪(つみ)せられんは案(あん)の内(うち)。昔(むかし)も乙姫(おとひめ)病気(べうき)の時(とき)、猿(さる)の生胆(いきぎも)の御用(ごよう)に付(つき)、水母(くらげ)に仰付(おほせつけ)られしをいはれぬ口をしやべりし故(ゆゑ)、龍神(りうじん)のいかりを請(うけ)、筋骨(すじほね)ぬかれてかたわとなり恥(はぢ)を残(のこ)せしためしもあり。我(われ)は其上(そのうへ)大勢(おほぜい)の鱗(うろくず)どもの並居(なみゐ)る中(なか)にて広言(くわうげん)吐(はき)しことなれば、何(なに)面目(めんぼく)にながらへん、山林(さんりん)へも身(み)を