と、我々が地頭難陀龍王へ勅定下り、龍宮にて色々評議有ける処を某命に懸て申上、漸と此役目を承り、何とぞ御身を連行んと忠義一図の謀。乗捨し船を盗、かく侍の姿と変じ、神変を以俳諧の句などを吟じ、近寄て御身を引立、水中へ飛入んと兼てよりはかりしが、 思はずも御身の器量に心まよひ、わりなき恋をいひ懸しに、君が情の深緑、松に千年と藤浪の、 思ひまどひし恋衣、互の帯の打とけし、其むつごとのわすられず、又の逢瀬と兼言の
兼て工し我心も、きのふに替飛鳥川、淵と瀬川の君ゆゑに、我身を捨る覚悟なれば、是より我は龍宮へ帰とも、菊之丞を取得事中々力およばずと申上なば、龍神より罪せられんは案の内。昔も乙姫病気の時、猿の生胆の御用に付、水母に仰付られしをいはれぬ口をしやべりし故、龍神のいかりを請、筋骨ぬかれてかたわとなり恥を残せしためしもあり。我は其上大勢の鱗どもの並居る中にて広言吐しことなれば、何面目にながらへん、山林へも身を