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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(五之巻)

根南志具佐 五之巻06

▼開

なれば、是非(ぜひ)/\我(われ)を連行(つれゆき)て御命(おいのち)全(まつた)ふし給ふべしといひつゝ、立(たつ)て舟(ふな)ばたより飛入(とびいら)んとする処(ところ)を彼男(かのおとこ)いだきとめ、お志(こゝろざし)は嬉(うれ)しけれども今(いま)御身(おんみ)を殺(ころ)しては、流石(さすが)いやしき畜生(ちくしやう)ゆゑ、情(なさけ)を仇(あだ)にて報(ほう)ぜしと世(よ)の取沙汰(とりさた)をせられては、我身(わがみ)ばかりの恥(はぢ)ならず、国(くに)に残(のこ)せし親兄弟(おやけうだい)一門(いちもん)までの恥辱(ちぢよく)といひ、其上(そのうへ)玉(たま)の顔(かんばせ)を底(そこ)の藻屑(もくず)となさん事(こと)、見(み)るに忍(しのび)ぬことなれば、必(かならず)はやまり給ふまじ。我(われ)さへ死(しな)ばことおさまる。いや主(ぬし)を殺(ころし)ては、わらは情(なさけ)の道立(みちたゝ)ずと、互(たがひ)に命(いのち)捨(すて)小(を)

舟(ふね)、死(し)を争(あらそふ)折(おり)からに、やれ待(まち)給へと聲(こゑ)をかけ立出(たちいづ)るは、荻野(おぎの)八重桐(やへぎり)なり。二人(ふたり)は驚(おどろき)、飛(とび)のかんとするを両手(りやうて)にて押(おし)しづめ、必(かならず)さわき給ふべからず。最前(さいぜん)蜆(しゞみ)取(とら)んとて中洲(なかす)まで行(ゆき)けるが、酔(ゑひ)つよくして堪(たへ)がたし。小舟(こぶね)に乗(のつ)て立帰(たちかへり)、お二人(ふたり)の閨(ねや)の内(うち)いぶかしくは思(おも)ひしが、邪广(じやま)せんもいかゞなり、または様子(やうす)も聞(きか)んものと舟(ふね)のあなたに身(み)をひそめ、始終(しじう)の様子(やうす)は聞(きゝ)たるぞや。かげろふの夕(ゆふべ)を待(まつ)、夏(なつ)の蝉(せみ)の春秋(しゆんじう)を知(し)らざるさへ、命(いのち)を惜(おしむ)習(ならひ)なるに、お二人(ふたり)の死(し)を争(あらそ)ふとは、扨(さて)/\