なげて死る覚悟と極たり。君を助て、そら故に死る我身は本望ながら、死れば忽生をかへ、あさましき姿とならば、さぞやあいそも尽給ん。 其上また世の人は、死して未来と契れども、君は閻王の寵を請、我は又はかなくも畜生道に落行ば、相見る事もなりがたし。薄えにしと思ふほど胸の水のとけやらず、必/\死だ跡にて一ぺんの御ゑかうも君が口より請るなら、未来の苦げんものがるべし。去ながら我死すとも龍王城にはさま/\の手だれあれば、かま
へて水辺へ出給ふべからずと、事さま/\と物がたり、又なみだにぞむせび入。路考も袂をしをりしが、御身の上の物語、始て聞て驚入たり。 生をかゆるとは云ながら、ためしなき事にもあらず。唐土にては非情の梅さへ、其精㚑美人と成、契をこめしと聞伝ふ。日のもとにては安部の保名、狐と夫婦の契をなせば、何かはくるしかりそめながら、枕かはせし其人を我身のかはりに死なせては、わらは情の道立ず。其上我は閻王のしたひ給ふと聞からに、とてものがれぬ命