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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(五之巻)

根南志具佐 五之巻05

▼開

なげて死(しぬ)る覚悟(かくご)と極(きはめ)たり。君(きみ)を助(たすけ)て、そら故(ゆゑ)に死(しぬ)る我身(わがみ)は本望(ほんまう)ながら、死(しす)れば忽(たちまち)生(しやう)をかへ、あさましき姿(すがた)とならば、さぞやあいそも尽(つき)給ん。 其上(そのうへ)また世(よ)の人(ひと)は、死(し)して未来(みらい)と契(ちぎ)れども、君(きみ)は閻王(ゑんわう)の寵(てう)を請(うけ)、我(われ)は又(また)はかなくも畜生道(ちくしやうだう)に落行(おちゆか)ば、相見(あひみ)る事(こと)もなりがたし。薄(うすき)えにしと思(おも)ふほど胸(むね)の水(みづ)のとけやらず、必(かならず)/\死(しん)だ跡(あと)にて一(いつ)ぺんの御ゑかうも君(きみ)が口(くち)より請(うけ)るなら、未来(みらい)の苦(く)げんものがるべし。去(さり)ながら我(われ)死(し)すとも龍王城(りうわうじやう)にはさま/\の手(て)だれあれば、かま

へて水辺(すゐへん)へ出(いで)給ふべからずと、事(こと)さま/\と物(もの)がたり、又(また)なみだにぞむせび入(いる)。路考(ろかう)も袂(たもと)をしをりしが、御身(おんみ)の上(うへ)の物語(ものがたり)、始(はじめ)て聞(きい)て驚(おどろき)入(いり)たり。 生(しやう)をかゆるとは云(いひ)ながら、ためしなき事(こと)にもあらず。唐土(もろこし)にては非情(ひじやう)の梅(うめ)さへ、其(その)精㚑(せいれい)美人(びじん)と成(なり)、契(ちぎり)をこめしと聞伝(きゝつた)ふ。日(ひ)のもとにては安部(あべ)の保名(やすな)、狐(きつね)と夫婦(ふうふ)の契(ちぎり)をなせば、何(なに)かはくるしかりそめながら、枕(まくら)かはせし其人(そのひと)を我身(わがみ)のかはりに死(し)なせては、わらは情(なさけ)の道立(みちたゝ)ず。其上(そのうへ)我(われ)は閻王(ゑんわう)のしたひ給ふと聞(きく)からに、とてものがれぬ命(いのち)