さてさて、みなで叔母さまをだまくらの権五郎にして、よほどの金子を借りたらしい。これで吉原のツケを返してまた遊ぼうと、みな安心してその夜はぐっすり眠りについた。
しかし足だけは、叔母のところでずっと尻の下にしかれていたので、ぐったり疲れて寝そびれている。
「みんな楽しんでいるのに、オイラひとりが大人しくしているのもバカらしい…。」
あれこれ考えているうちに、ふと魔がさして、足はコッソリ金の半分を持ち出してトンズラかましてしまった。
町芸者にたいこ持ちを引き連れ、通しカゴを借りきっての江ノ島・鎌倉めぐり。足は、どうせオイラの金じゃねぇと、やたらめったらおごりまくる。
なるほど、足にとってはカゴに乗ることが一番の楽しみらしい。
「カゴに乗りっぱなしも、しんどいものだな。ちっと歩いて休もう。てめえたちは、くたびれはせぬか。そのかわり、生きたカツオを食わせるぞ。」
「もし、旦那、江ノ島では恵比寿屋になされまし。」
次の夜──。
「足めは、いいことをしおった。」
今度は手が残りの金を盗みだし、自分もちょっと楽しもうと賭場へくり出した。しかし、しこたま負けコケて、ヤケをおこして大ゲンカをはじめてしまう。相手の頭をどデカい握りこぶしでぶん殴れば、たちまち大騒ぎ。
口を連れてこなかったので、手はダンマリで殴り合っている。
「これこれ、のどがつまる! はなしてくれ! 真綿で首をしめるとは聞いたが、わりゃ、裸(素手)で首をしめるな!」
「刀が武士の魂なら、出刃庖丁はバクチ打ちの魂だ! 覚悟しゃがれ!!」