やがて夜が明けてお開きとなれば、足がなくては帰られないので呼びにやる。足はすぐにやって来て、みなを乗せて帰ろうとするが、〈気〉だけはグズグズしてラチがあかない。なんとか丸めこんで連れ帰ろうとする。


「なんだ、まだ話したいことがあるのか? そんなら待て、耳がさっき帰ったから呼び戻して聞こう。」

「どうも帰したくおっせんよ(ありません)。」
女が調子のいいこと言ってはなさないので、足がいくら呼んでも〈気〉は二階から下りてこない。

「さぁ、旦那、それは未練、未練。」
みなでトボトボ朝帰りをしていると、足がふと思う。

「ほかのヤツらは、みなうまいこと楽しんだのに、オイラはくたびれるばかりで面白いことなどちっともない…。」
せめて疲れを癒そうと、〈気〉にねだってひとりだけカゴに乗せてもらった。ちょっとうれしそうである。


「オイラは遊びに来るより、うちでコタツに突っこんでノビノビしてるほうがいいのさ。」

「足をカゴに乗せるのは大賛成だ。まんいち犬のクソでも踏んだら、おれが拭くハメになるからな。」