お江戸のベストセラー

人間一生胸算用にんげんいっしょうむなざんよう

10

人間一生胸算用 10

みな/\
申けるは
ほん

きが
つか
なん



かいに
かんじんの
手が
なくては
ならずのもりの
おながどりと
みなとり/\に
申ければ
きは
なるほどと
思ひ
さつそく
手を
よびにやる
そも/\
手といふ
やつがつかはれる

かりで
あまりたのしみのなき

ものゆへ、こゝへきことはきたれども
ほかのものゝやうに、おもしろ
みもなく、たゞ大じんの
きがもつてゐるはながみ
ぶくろへ、ゑんりよなく手を
つゝこんで、たいこ、ちや屋
やりて、わかいものにしうぎを
やり、うれしがらせて
たのしむばかりなり
それよりとこおさまり
ければ、口はきのそばに
つきそいゐて、こゝぞ
口がはたらきをみする
ところと、いろ/\いやらしみを
いひかくれば、女郎も大じんと
みたるゆへ、しよくわいから
おもしろおかしくもてなし
すへは大くせつとなり
もしへ、まことがあらばほり
ものをしなんしヨといわれ
きは、ぐつとのろくなり
ほるきになりければ、むざんや
手はせなかへなにがし
一心命と
古風に、ながめいを
ほられる

女郎「ひきやうな
じつ
として

なんし

手「おれが
ひきやうより
てめへたちが
ひきやう
ばかに
するのだ

「アヽいたひ/\
きうさい
きらひですへぬ
ものを
なんの
こずとも
よかつたに

「なをほつて
かた
まるとは
おれが
せなかの
事さ

手はたいくつ
して、あたまで
けんをする
「ちへさャァ

「ごうさい

「むかし
くわんうは
ごをうち
ながら、うでの
ほねを
けづら
せたが
おまへは
けんを
うち
ながら
ほりものを
ほらせるとは
がうけつ
/\

「口がいふ
よいから
きゝづめで
口がいつそ
すくなつた
しかし
おれから
さきへ
生れた
から
しやれ
させ
ては
まけは
しない