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人間一生胸算用にんげんいっしょうむなざんよう

8

人間一生胸算用 08

気は大ぜいに、たてこかさられ
むしやうに気が大きくなり
あるひ口を神につれて
むかふじま、むさしやへ来り
やみとおごりかける、口は
うまれてからはじめて
こんなうまひものを
くひ、さけもへしと
くらつて大に
ゑい、きは
だん/\
ちがつて
きて、さゝの
はを
かつひで
おどる
さけを
きちがひ
水と
いふ事
此いはれか

「気はみぶきやうげんに
きつねの付たやうな
手つきをして
おど
れば
口は
こけが心学しんがく
ならふやうに
ちやわんをたゝひてはやす

「あらひこいも
だし
ましやうか

「何から
くはふか
小娘が
ごふく
やへ
いつた
やふに
いつそ
目うつりが
する

それより、きはいよ/\
きがそれ、めにもうつくしひ
ものをみせ、はなにも
かけがうのあだな
にほひをかゞせんと
よびにやり、中ノ丁の
夕けしきをみせければ
目口はな三人よつて
ぼんぶのちゑを出し
きをすゝめて、中で
いつちうつくしひと
おぼしきおいらんを
しまひにやる

「口はよだれを
たらして
みている

「はながいふ
アヽいゝ
にほひだ
百介が所の
くこをつけた
そふだ

「ちつと小きくで
はなをかんでかぐべい
今までは
ちりがみで外
かまなんだ

目は正月を
三度いちどきに
するきどり
にて、目の
さやを
はづして
ながめてゐる