①
こゝにあはれをとゞめしは無次郎が心なり、すこしのゆるみに
つけこまれ、このくにのあるじながらも、たぜいにぶぜい
ちからおよばず、むねの
あたりの在城を
おひ出され
すご/\と
いづくへか
おち
ゆく
②
「けちをして
おいらを
うたせた
むくひだ
これで
おもひ
しりつこ
③
「ヱヽざんねん/\
ももくりざん年
かき八年
おれはむねんで
いでかねる
④
「京伝、いゝむだも
あれども
あまり
きのどく
だから
だまつて
ゐる
⑤
「さて
みな/\
のぞみの
まゝに
心をおひ出し
心こゝに
あらざれば
ばんとうの
気は、だれ
はゞからずきまゝ
をして、ついに
無次郎がからだを
おうりやうしければ
是より無状
無象国大きにみだれける
⑥
「気がいふ、ほんに
口にも久しく
土用が入るまひ
いつでもかんの内だらう
⑦
「みな/\
気に
おはむきをいふ
「アノやうな
けちな心を
みた事が
ござりませぬ
あいつは一万年も
いきる心で
ごさり
ませう
⑧
「おまへの事をば、きんじよの
むすこしうも、きのきいた
お人だと、かげでほめます
⑨
「口がいふ、わたくしも朔日、十五日に
やう/\やすひもの一まひづゝ
たべるよりほか、百五十する
ときもかつほなぞは、かいだ
事もござりません、はたらき
のあるねこには
おとりさ