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人間一生胸算用(にんげんいっしょうむなざんよう)

2

人間一生胸算用 02

▼開

①

ある時、京伝うか/\と
艸庵(そうあん)をたち出、いづく共
なく行けるが、思はず善魂(ぜんたましゐ)の
かくれがへ来り、人間のからだの
かうしやくをきく
「それ、人間のからだは天地の小き
やふなものじや、すなはち二ツの
目は月日のごとく、肉(にく)は土にひとしく
ほねは岩石のごとく、血(ち)は水にて
脈(みやく)は水のさし引にひとしく
毛(け)や爪(つめ)は艸木にて、つくいきと
ひる屁(へ)は風のごとく、なみだと
小べんはあめにひとしく
ものいふは雷(らい)のはつするが
ごとく、からだに生(しやうず)る
のみしらみはとりけだもの
の生ずると同じどうり
それじやによつて、またぐらの
谷(たに)あいにはまつたけもしやうじ
へその下のうみべにはあかかいも
うまるゝでないか、そのうち
ひといふものは天地ぞうくはの
神にひとしく、このものゝ
りやうけんしだひにて、せいじんや

ほとけもうまれ、又おにも
てんぐもうまれる、がてんか/\と
古風なせりふにて
博物志(はくぶつし)にいふ土肉(どにく)川脈(せんみやく)の
引くりかへしをいひきかせる

「○老子(ロウシ)ハ聖人(セイジン)虚(キヨニス)其心(ソノコヽロ)ヲト云
○大学(ダイガク)ニハ先(マズ)正(タヾシウス)其心(ソノコヽロ)ヲト云
○華厳経(ケゴンキヤウ)ニハ
唯(ユイ)一心ト説(トキ)テ
○心こそ心
まよはす
心なり
○心だにまことのみちにかなひなばといふ
神詠(しんゑい)を思ふにつけ、とかく大事な
ものは心じや

②

「大事なこゝろほんだはら
などゝわるひぢ口を
いふなども
やつぱり心のしわざじや

③

京伝はたゞ御もつとも/\と
あはせてゐる

④

「こゝはさしづめ
ばいやくみせの
いひたてなら
しんのうの人形と
いふばなれど
それでは
あんまり
いろけがないから
しんのうの
めうだいに
しんぞうと
しやれたのだ