梶枕、一夜の情有磯海の深心を明し合はゞ、 此世の願足なんとて、路考が手を取よりそへば、さすが上なき粋ながら、向ふよりは思ふ事のいとふかく、我もまた此人ならではと、思ふ心のおもはゆく、詞はなくて銚子取つゝ盃をさし寄れば、彼、丁と請てつゝと干て路考にさす。呑ではさし、さしてはのみ、合もおさへも二人なれば、数々めぐり逢ふことゝも、結の神の引合せ。夜もはや五つむつごとの雲となり、龍とならんと月夜烏を心のせいし、互のちぎり浅からず。こけるともなく
寝るともなく、互の帯の打とけし、二ッ枕のさゞめ言、いかなる夢を見しかいざしらず。
根奈志艸四之巻終