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根南志具佐ねなしぐさ

原文(四之巻)

根南志具佐 四之巻09

梶枕かぢまくら一夜ひとよなさけ有磯海ありそうみ深心ふかきこゝろあかはゞ、 此世このよねがひたりなんとて、路考ろかうとりよりそへば、さすがうへなきすいながら、むかふよりはおもことのいとふかく、われもまた此人このひとならではと、おもこゝろのおもはゆく、ことばはなくて銚子てうしとりつゝさかづきをさしよすれば、かのおとこてううけてつゝとほし路考ろかうにさす。のんではさし、さしてはのみ、あひもおさへも二人ふたりなれば、数々かず/\めぐりふことゝも、むすぶかみ引合ひきあはせ。もはやいつつむつごとのくもとなり、りやうとならんと月夜烏つきよがらすを心のせいし、たがひのちぎりあさからず。こけるともなく

るともなく、たがひおびうちとけし、ふたまくらのさゞめごと、いかなるゆめしかいざしらず。

根奈志ねなしぐさ四之巻しのまきおはり