恩を戴、浅草の代参りは足と名付し銭のはたらき。釣竿を買ふ親仁は太公望が顔色を移し、 一枚絵を見る娘は王昭君がおもむきに似たり。 天を飛蝙蝠は蚊を取ん事を思ひ、地にたゝずむよたかは客をとめんことをはかる。水に船か/\の自由あれば、陸に輿やろふの手まはしあり。僧あれば俗あり、男あれば女あり。屋敷侍の田舎めける、町ものゝ当世姿、長櫛短羽織、若殿の供はびいどろの金魚をたづさへ、奥方の附々は今織のきせる筒をさげ、もゝのすれる妼は己が尻を引ずり、
渡り歩行のいかつがましきは大小の長に指れたるがごとし。流行医者の人物らしき、俳諧師の風雅くさき、したゝるとてぴんとするものは色有の女妓と見へ、ぴんとしてしたゝるきものは長局の女中と知らる。剣術者の身のひねり、六尺の腰のすはり、座頭の鼻歌、御用達のつぎ上下、 浪人の破袴、隠居の十徳姿、役者ののらつき、職人の小いそがしき、仕事師のはけの長き、百姓の鬢のそゝけし、芻蕘の者も行、雉兎の者も来る。さま/\の風俗、色々の㒵つき、押わけられぬ人群集