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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(四之巻)

根南志具佐 四之巻03

▼開

恩(おん)を戴(いたゞき)、浅草(あさくさ)の代参(だいまゐ)りは足(あし)と名付(なづけ)し銭(ぜに)のはたらき。釣竿(つりざを)を買(か)ふ親仁(おやぢ)は太公望(たいこうばう)が顔色(がんしよく)を移(うつ)し、 一枚絵(いちまいゑ)を見(み)る娘(むすめ)は王昭君(わうせうくん)がおもむきに似(に)たり。 天(てん)を飛(とぶ)蝙蝠(かうもり)は蚊(か)を取(とら)ん事(こと)を思(おも)ひ、地(ち)にたゝずむよたかは客(きやく)をとめんことをはかる。水(みづ)に船(ふね)か/\の自由(じゆう)あれば、陸(くが)に輿(かご)やろふの手(て)まはしあり。僧(そう)あれば俗(ぞく)あり、男(おとこ)あれば女(おんな)あり。屋敷(やしき)侍(さむらい)の田舎(ゐなか)めける、町(まち)ものゝ当世(たうせい)姿(すがた)、長(ながき)櫛(くし)短(みじかき)羽織(はおり)、若殿(わかとの)の供(とも)はびいどろの金魚(きんぎよ)をたづさへ、奥方(おくがた)の附々(つき/\)は今織(いまおり)のきせる筒(づゝ)をさげ、もゝのすれる妼(こしもと)は己(おのれ)が尻(しり)を引(ひき)ずり、

渡(わた)り歩行(かち)のいかつがましきは大小(だいせう)の長(ながき)に指(さゝ)れたるがごとし。流行(はやり)医者(いしや)の人物(じんぶつ)らしき、俳諧師(はいかいし)の風雅(ふうが)くさき、したゝるとてぴんとするものは色有(いろあり)の女妓(おどりこ)と見(み)へ、ぴんとしてしたゝるきものは長局(ながつぼね)の女中(ぢよちう)と知(し)らる。剣術者(けんじゆつしや)の身(み)のひねり、六尺(ろくしやく)の腰(こし)のすはり、座頭(ざとう)の鼻歌(はなうた)、御用達(ごようたし)のつぎ上下(かみしも)、 浪人(らうにん)の破袴(やぶれはかま)、隠居(ゐんきよ)の十徳(じつとく)姿(すがた)、役者(やくしや)ののらつき、職人(しよくにん)の小(こ)いそがしき、仕事師(しごとし)のはけの長(なが)き、百姓(ひやくせう)の鬢(びん)のそゝけし、芻蕘(すうぎやう)の者(もの)も行(ゆき)、雉兎(ちと)の者(もの)も来(きた)る。さま/\の風俗(ふうぞく)、色々(いろ/\)の㒵(かほ)つき、押(おし)わけられぬ人群集(ひとくんじゆ)