畠山どのは、鎌倉、雪ノ下のムカデの金兵衛という金持ちを呼びよせて、君のおん頭の張り子を作らせる。
重忠「どうあろうとも、おそろしくデカくやらかせ。おいらの頭でさえ見てのとおりだ。まして頼朝さまの頭、ど外れにいたせ。心得たか。古紙がたんと要るなら、大磯からきた文殻でもまわさせよう。」
金兵衛「委細、かしこまりました。だいぶ紙が要りましょう。ふみがらひいらげは、どうでござります。」
どうやら、下々の者も頭には苦労しているようす。
「おらが頭も、こんなちっぽけでは鎌倉武士には見えまいから、りっぱな頭にしたい。安くできればいいが…ど苦労する。」
これを重忠どのが聞きおよび、お達しを出す。
「下々の者は、みかんカゴにチリ紙を張って、サッと目鼻を描くだけでよし。」
下々の者「おれの頭には、シラクモ(白癬)のあとがある。このとおりにしよう。どうせなら、そっくりにしたい。」
下々の者「どうでもいいわな。どうせ、いい男ではなし。誰が、ニセ首だと言うか。」