お江戸のベストセラー

鎌倉かまくら頓多意気とんだいき

11

鎌倉頓多意気 11

頼朝公のおん頭の張り子は、なかなか乾かない。そのうち雨も降り続いたので、しかたなく多くの合羽で包んだら、まるで品川海晏寺かいあんじ合羽かっぱ大仏だいぶつのようになってしまった。
鎌倉中の老若男女が、大仏参詣だといってデカ頭参りでたいへんな賑い……と聞いたかと思えば、そのまま、夢はさめてしまう。
ああ、めでたい、めでたい。

芝桜川慈悲成 作
豊国 画

注釈

海晏寺の合羽大仏
寛政五年(1793)、品川の海晏寺に突如出現した日本一大きい大仏。遠く海上からも見えるその巨大さが評判となり連日黒山の人だかりで賑わった。じつは、これは張りぼての合羽でできた大仏。見物客のあまりの混雑ぶりに「通行のじゃま!」という奉行所からのお達しで、たった2ヶ月で姿を消す。江戸っ子魂あふれる、幻の逸品。