梶原兄弟はデカ頭を欲ばりすぎて、とてもひとりではかぶられず、親父どのに叱られてしまう。
「見ろ、やりすぎおって! そんなデカ頭が、ひとりでかぶれるものか。兄のはよそ行きにして、まず、おとと(弟)の平次の頭を二人でかぶっておけ!」
仕方なく、大磯通いも兄弟連れだって出かける。
梶原弟「兄貴、この頭は少し臭いの。草双紙のでき立てという匂いだ。」
梶原兄「手ぬぐいも三尺では、ほっかむりもできん。六尺買って、フンドシと両用だ。」
鎌倉の諸大名に、お達しが下る。
「頭そろい次第、右大将(頼朝)が鶴岡にてご覧になる!」
まだ頭のないやからは、あわててお多福の頭で間に合わせたり、座頭の頭に目玉を描いたり、色男の頭を紅がらで塗ったり──張り子屋の丸もうけ、明けて五つ時(午前8時ごろ)になることもあり、鎌倉中がバカ騒ぎだ。