鎌倉の切通で、頼朝公のおん頭を金兵衛が受け取っている。
下々の安頭の張り子も数多くできあがり、どこから引くとも知れず毎日毎日みかんカゴをつけた馬が行きかうようすは、まるで四谷、新宿のよう。
「みかんカゴの再利用、紀伊国さえもん、ほたけまきえもん。」
「今日は、よい天気じゃ。このような天気が四、五日続けば金兵衛はもうけようが、雨でも降ったらたいへんだ。張り子も相撲と同じで天気しだいじゃ。」
「そう、そう。晴天が十日も続けば、頭はいくらでもできます。」
馬子「ごんざえもんどのの言わっしゃるこんだが、その馬は、よく小便のたれもらす。」
馬子「なに、ヒヒン、ヒヒンもやかましい。前の宿で食ったばかりではないか。」