大仏くおう(大仏供養)
頼朝公は、めくり博打から思いついて、次は餅食いをして遊ぼうと、ぐっと地味にお出かけになる。
「色気より食い気! 花より団子!」
三人は、浅草名物の大仏餅の店で一両を賭けて食い競べを始めた。岩永と俣野は、酒も甘い菓子も両方イケる盗人上戸なので、ここでも頼朝公をこっぴどく食い負かした。
ちょうどその時、平家の侍、悪七兵衛景清が衆徒の姿に身をやつして現われた。頼朝公、こんどは重忠の役どころをご自身で演じようと思い立ち、質屋に入れてあった烏帽子と直垂を受けもどして景清に渡す。
頼朝「これをやるから、突くなり斬るなり、七ツ屋へぶち殺しなりしろ。つまり晋の予譲の故事な。知ってるか?」
景清「“しんのよじょう” やら “新造(若い遊女)の寝相” とやらは、こっちは知らねぇ。コリャ、今どきの景清が、そんなものをなんに使うのだ。たかが箔押しの烏帽子に直垂、素人狂言じゃあるめぇし。」
頼朝「四の五の言わずに、足元の明るいうちにコレを持っていってお神楽でも踊れさ。せっかくおれが大食らいしてるところへ来やがって。だいたい、てめえのなりは火事場見舞いの帰りを見るようだ。もちっと気の利いたなりでつけ狙え!」