石橋の合戦(石橋山の戦い)
こうして頼朝公は、野暮な重忠を留守に残し、お土産がもったいないので諸大名へも知らせずに、岩永と俣野、真田の三人をお供に、ごくお忍びで江戸へ向かう。
やがて品川の宿場も過ぎると、今日から江戸入りなので祝いに一杯飲もうと、岩永と俣野のはからいで高輪の石橋万屋へ立ちよった。
岩永と俣野は、酒に酔って得手吉をおすすめし、二人でなれ合い竜を切って頼朝公をさんざんに負かしてしまう。
これを今に『頼朝、石橋の合戦』という。
俣野は、大引で赤蔵が揃いそうになるが、赤が九の上にあったはずだと、いちゃもんをつけて喧嘩になる。
岩永「これ与市、待ちやれ。上が俣野か下が俣野か知れねえ。」
真田「岩永さん、それ見ねえ、とんだことを言うぜ。この九は俺のところへ入るのだえ。どうも頭がおかしくなったようだ。」
俣野「らいちょう(頼朝)の御前だ。静まれ、静まれ!」
頼朝「そんなら、まき直し、まき直し。」
<屏風>
美人捲珠簾深坐
蛾眉但見涙痕湿