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花東はなのおえど頼朝公御入よりともこうおんいり

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花東頼朝公御入 02

鎌倉の将軍、みなもとの頼朝よりとも公。
四州(全国)を治めなさってから、なびかぬ草木もなく、臣下多き中にも岩永いわなが左衛門さえもん俣野五郎またのごろう、君をおだててそそのかす。
「花のあずまへ御下りになって江戸の繁栄をご覧になれば……お楽しみいっぱい!」
二人にのせられて、頼朝公もぐぐっとその気になる。
「江戸へ下るべし!!」

頼朝「どうだ、重忠、その方は鎌倉に残って、おれの留守を固く守れ。たいてい、旅の留守に女房を盗まれるものだ。」
重忠「ご両人がお供なさるからは、おぬかりはあるまいが、念のために真田の与市をつけてあげます。」

岩永「真田の与市は、頼朝公の御家来か。こいつは大笑いだ。」
俣野「なんだ、真田? 三味線箱を結わえるのか。」

頼朝「供には、岩永と俣野を連れるから、大丈夫だ。」
俣野「なにさ、しげ印。われら両人がお供するからは、ちっともうかつな事はさせぬ。」

真田「このたびの江戸への御下りは大切な御用なので、拙者がお供つかまつりましょう。」

岩永「こう上下かみしもを痛めつけて座ったのに、なんにも食い物はねえの。おいらはやっぱり、 葱鮪ねぎま熱燗あつかんがいいね。」

注釈

岩永左衛門
江戸期の源平合戦物によく登場する、源氏方の悪役。赤っ面で傲慢。
俣野五郎
俣野景久(またの かげひさ)
平安末期の武将。石橋山の戦いで頼朝の敵方として戦い頼朝を敗走させた。
このお話では、頼朝の家臣になっている。
重忠
畠山重忠。鎌倉幕府初期の有力御家人。源平合戦での戦功も多く人望もあり「鎌倉武士の鑑」とされた。
江戸のお話では、決まって頼朝の忠実な側近(世話係)として描かれる。
真田の与市
真田義忠(さなだ よしただ)
平安末期の武将。頼朝に味方して石橋山で奮戦するも、俣野五郎に敗れ若くして討ち死にする。
このお話ではそんなことはお構いなく、俣野と共に頼朝の家臣になっている。与市は江戸では美男の人気者。俣野は悪役にされることが多い。
三味線箱を結わえる
真田紐とかけている。
しげ印
畠山重忠のカジュアルな呼び名。
葱鮪
ねぎま鍋。ねぎとマグロを鍋で煮ながら食べる料理。

材木座書房

ぴーちょ

楽しい鎌倉