不思議隠れ(臥木隠れ)
岩永と俣野は、真田がいては何事もやりにくいと思い、頼朝公を言いくるめて、御用金を取りに鎌倉へ帰してしまった。
これで二人は誰はばかることなく、頼朝公にいろんなアホウをおすすめし、しょうもない大将に仕立てあげて多くの金銀をかすめ取る。
芸者「オホホ、オホホ、オホホ。」
芸者「これさ、笑いなんすな。」
岩永「これは、奇妙だ。どこに居なさるか知れません。ここかしら、ここかしらん?」
頼朝「なんと、そうか! 見えまい、見えまい。このあとは、鳩に豆を拾わせるぞよ。」
頼朝公は『楊枝隠れの伝』を習い、これを座敷芸にしなさる。ぜんぜん隠れもしないのに、みなで不思議、不思議と感心すれば、いよいよ調子こき──これを『頼朝の不思議隠れ』という。