質気落(七騎落)
女郎の放生会はたいへんな物入で、御用金はもはや絶えだえになってしまった。
それでも岩永と俣野は、またまた頼朝公をそそのかし、こんどは船遊びだと言って船の上でめくり博打を始めた。『三人博打の一人乞食』のとおり、岩永と俣野が二人なれ合って頼朝公をさんざんな目に合わす。
しまいには烏帽子と直垂まで質物にとられてしまい、そのうち景清がつけ狙ってきたら身代りにやるシロモノなので、
「質にとられては、心細い…。」
と、大きに気を落としなさったので、これを『頼朝の質気落』という。
「その八を知らねえてめえたちは、でぇぶ絵がつくぞ。」
「なに、悪絵さ。そして、めくれやせん。みんな持ち出しさ。」
「船頭をやって薪屋蕎麦をとるのは、どうだ。」
「昼飯は、太郎か武蔵家としやしょう。それとも、ひねって真崎の崎玉屋か。」